築51年の家を断熱等級6相当へ 滋賀の改修モデルハウスが示す現実解
ニュースの概要
住宅会社の澤村が、滋賀県に高断熱リノベーションのモデルハウスを開設しました。題材は築51年の既存住宅です。改修によって、国の断熱性能表示で上から数えて上位にあたる断熱等級6相当の性能を目指した内容とされています。新築ではなく築古住宅を対象に、窓や断熱材をどう組み合わせれば等級6の水準に届くのかを、実物の建物で体感できる形にした点が特徴です。1970年代前半に建った住宅は、当時の基準ではほぼ断熱がなく、冬は底冷えするのが当たり前でした。そうした家を現行の上位水準へ引き上げる取り組みを、見学できる場として公開したことになります。
引用元: 【断熱材・窓】澤村:築51年住宅を断熱等級6相当に改修、滋賀に高断熱リノベーションモデルハウスを開設(みんなの広報宣伝部)
分析・見解
築51年の家を等級6相当にする意味
断熱等級6は、2022年に新設された上位の等級です。外壁や窓から逃げる熱の量を示す外皮平均熱貫流率(UA値)で、滋賀を含む地域では0.46以下が目安になります。築51年の住宅は1975年ごろの建築ですから、当時は断熱の義務そのものがありませんでした。壁に断熱材が入っていない家も珍しくなく、窓は一枚ガラスのアルミサッシが主流でした。そこから等級6相当へ上げるには、単なる部分補修では足りません。壁、床、天井、窓のすべてを同時に見直す必要があります。
窓が熱損失の半分近くを占めるという事実
冬の暖房熱が家から逃げる経路を調べると、窓や玄関ドアなどの開口部が約5割を占めるという試算が広く知られています。壁の断熱材をいくら厚くしても、窓が弱いままでは効果が頭打ちになります。そのため改修では、既存の窓に内窓を足すか、樹脂サッシと複層ガラス以上の窓へ交換するのが定石です。等級6相当をねらうなら、トリプルガラス(三枚ガラス)の樹脂サッシまで視野に入ります。窓の改修は工事が比較的短く、住みながら進めやすい点でも、改修全体の入り口になりやすい部分です。
気密と換気を抜くと性能は出ない
もう一つ見落とされがちなのが、すき間です。断熱材を入れても、床下や壁の中を冷たい空気が通り抜けると、数値どおりの暖かさになりません。築古住宅は柱や梁の取り合いにすき間が多く、気密の確保が新築より難しい工事です。気密を上げると、今度は空気の入れ替えを機械に頼る必要が出ます。換気計画まで含めて設計できるかどうかが、改修の出来を分けます。実際、同じ断熱材を使っても、施工後に気密測定をして調整した現場と、測定なしで終えた現場では、暖房費に差が出やすいと言われます。
モデルハウスという見せ方がもたらす変化
断熱性能は、カタログの数字だけでは顧客に伝わりません。冬に玄関から居間へ入った瞬間の空気の差や、窓際の冷たさがないことは、体感して初めて分かります。築51年という分かりやすい古さの家を改修して見せれば、「うちの家でも変われる」と感じてもらいやすくなります。新築の高性能住宅の展示とは違い、顧客が自分の家に置き換えて想像できる点が強みです。今後は他の工務店でも、築古のモデルを自社で持つ動きが広がる可能性があります。
ビジネスへの影響
工務店が改修で押さえるべき三つの数字
改修事業で最初に必要なのは、工事前後の性能差を数字で示せる体制です。UA値、気密性能を表すC値、そして想定される年間の暖房費。この三つを工事前に計算し、工事後に実測できれば、見積もりの説得力が大きく変わります。逆に、数字を出せない会社は、補助金を使う案件でも不利になりやすくなります。まずは自社の標準的な改修パターンを二つか三つに絞り、それぞれの費用と性能を一覧にしておくと、営業の負担が減ります。
補助金と費用の組み立て方
築古住宅の全面断熱改修は、規模によって数百万円から一千万円を超えることもあります。国の住宅省エネ関連の補助制度では、窓の改修に対する支援が特に厚く、窓単位で段階的に進める顧客も増えています。事業者としては、窓から始めて数年後に壁や床へ進む二段階の提案を用意しておくと、予算の壁を越えやすくなります。補助金は年度ごとに条件が変わるため、申請の締め切りと予算消化の状況を常に確認しておく運用が欠かせません。
見学拠点を持つ事業者と持たない事業者の差
モデルハウスは費用がかかりますが、問い合わせから契約までの期間を短くする効果があります。常設が難しい場合は、施工済みの顧客宅を見学会として公開する方法もあります。いずれにせよ、築古の改修は不安が大きい買い物です。実物を見せられる事業者が選ばれやすくなる流れは、今後さらに強まるでしょう。