非住宅の省エネ改修に補助率3分の1、上限5,000万円の第2回募集が始まった意味と活用の勘所
ニュースの概要
国土交通省は10月16日、既存建築物省エネ化推進事業の第2回提案募集を始めた。対象は住宅ではなく、事務所や店舗、施設などの非住宅建築物の省エネ改修である。補助率は補助対象工事費の3分の1で、1件あたりの上限は5,000万円とされる。ポイントは、壁や天井などの断熱改修を必ず含めることだ。そのうえで、複層ガラスや二重サッシといった窓まわりの改修、高効率の空調・換気・給湯・照明設備の更新も補助の対象になる。改修前に比べて原則20%以上の省エネ効果を出す必要があり、外皮(=建物の外側を包む壁・屋根・窓)の改修面積の割合も要件に関わる。設備の入れ替えだけで済ませず、建物の外側の性能を上げる工事を中心に据えた制度設計といえる。
引用元: 国土交通省、非住宅の省エネ改修補助金の第2回提案募集を開始(建材タイムズ)
分析・見解
設備更新だけでは通らない、断熱必須の狙い
この制度で最も目を引くのは、断熱改修を必須とした点である。非住宅の省エネ改修では、費用対効果の面から空調や照明の更新が先に選ばれやすい。LEDへの交換や空調機の入れ替えは工期が短く、効果も読みやすいからだ。一方で壁や天井、窓の改修は営業しながらの工事が難しく、後回しにされてきた。
今回の要件は、その優先順位を逆にしようとするものだ。建物の外側の性能を先に上げておけば、冷暖房の負荷が下がり、設備を小さく選べる。逆に、設備だけ高効率にしても、断熱の弱い建物では熱が逃げ続ける。国が断熱を条件にしたのは、改修後の省エネ効果を長持ちさせる狙いがあると読める。
原則20%以上の基準は、実は低くない
20%という数字は、一見すると控えめに見える。しかし築年数の古い事務所ビルでは、照明のLED化だけでは効果が1割前後にとどまることが多い。空調の更新に、断熱と窓の改修を組み合わせて、ようやく届く水準だと考えるのが現実的だ。
ここで鍵になるのが、改修前の状態をどれだけ正確につかんでいるかである。エネルギーの使用実績が数年分そろっていない建物は、効果の根拠を示しにくい。検針データや設備台帳の整理が、申請準備の最初の関門になるだろう。
第2回募集は、継続と競争の両方を意味する
第2回という位置づけは、この補助が単発ではなく続けて用意されていることを示す。ただし予算には限りがある。第1回の傾向を見た事業者が、より要件に合う提案を出してくれば、競争は厳しくなる。
補助率3分の1は、自己負担が3分の2残るということでもある。補助が出るから工事をするのではなく、補助がなくても意味のある工事に上乗せする形が基本になる。なお、外皮の改修面積の割合に関する扱いなど細かな条件は、公募要領で確認が要る。
窓、断熱、空調を一本の筋で考える利点
複層ガラスや二重サッシは、壁の断熱より工事が軽く、テナントが入ったままでも進めやすい。窓は熱の出入りが大きい部位なので、先に手を付けると空調の負荷が目に見えて下がる。そのうえで空調を更新すれば、機器の容量を一回り小さくできる可能性がある。
容量が小さくなれば、機器代だけでなく電気契約や配管の見直しにも波及する。一度に全部を行わず、窓、断熱、空調と段階を分けて工事する計画も立てやすい。補助対象の三つの要素は、順番に考えると初期費用と運転費の両方を下げる一本の流れになる。
ビジネスへの影響
申請の前にそろえておきたい三つの資料
まず、過去数年分のエネルギー使用量と、設備の型式や設置年がわかる台帳をそろえる。改修前の基準がなければ、20%以上という効果を示せない。次に、外壁、屋根、窓の面積と現状の断熱仕様を図面から拾い出す。図面が残っていない建物は、現地調査から始める必要がある。
三つ目は、工事中も営業を続けるかどうかの方針決定である。テナントや利用者との調整は、設計者任せにすると遅れやすい。早い段階でオーナー側が窓口を決めておくと、工程の見通しが立てやすくなる。中小規模の建物でも、この三点は変わらない。
補助率3分の1で採算が合うかを見極める
補助率3分の1で上限5,000万円ということは、補助対象工事費が1億5,000万円の案件で上限に届く計算になる。それより小さな工事なら、補助額は工事費の3分の1に比例する。
残りの3分の2を自己資金や融資で用意する必要があるため、光熱費の削減額と投資回収の年数を、補助ありとなしの両方で試算しておきたい。補助が通らなかった場合でも実施するかどうかが、判断の分かれ目になる。ほかの支援策との併用の可否は制度ごとに異なるので、事前に確認しておくとよい。
設計者や施工会社と組む際の確認事項
提案募集では、建物の所有者だけでなく設計者や施工会社との連携が欠かせない。省エネ計算ができる設計者か、断熱と窓と設備を一括で見られる体制かを、最初に確認したい。見積もりは、補助対象になる工事とならない工事を分けて出してもらうと、後の精算で混乱しにくい。
公募の締め切りは限られるため、募集要領の入手から提案書の提出までの日程を逆算し、社内の決裁手順も先に確認しておくことを勧める。